「貴社の、吾が社のマークの由って来るところ如何?」。度々聞かれもし、又喋りもしたが正確に活字にするとなると、その影響の程が案じられるので、今一度アルマイトの発明者であり、又その商標を考えられた宮田 聰先生に、はっきりと聞き糺し、正しい智識として伝えて置く事としたい。
これがアルマイトの商標である。α(アルファ)はギリシャ語のアルファベットの最初の文字、ωをひっくり返した記号は同じく末尾のω(オメガ)をひっくり返したものであって、英語のMにも読める。(このMにも読めるというのは大した意味がないとのこと)即ち、最初と最後の文字をとって、初めから終わりまで何にでも利用できるという意味合いのものとした。
又、ALMITEという文字は、ALはALMINUMのALと、MITEはALMIGHTY(全能の)の意味をMITEとして合わせたものである。之も商標同様、全てのものに活用できる力強いものという主旨のものである。(昭和六年五月頃)
以上の様に極めて利用価値の多い、欲張った名前が付けられたが、正にその名の如く、今日アルマイトは凡ゆる方面に利用され、特に最も親しみ易い日用品では、毎日のように御厄介になり、アルマイトしてなければ、半製品の様に思われている程である。
勿論ALMITEという文字は今日凡ゆる辞典に掲載されているが、特に電化学方面の辞典がその解説に相当いい加減のものがあると先生は嘆いて居られた。当社の人達から常に正しいアルマイトの知識についてその名と共に普及する様に心掛け度いものである。
それでは理研のマークは?という事になると、そのマークが示す如く、富士山の見える静岡の産である事と、丸で囲んだのは、凡て丸く、和を貴び、而も商品としては回転率が良い様にという意味を含めたものである。 このマークに決定するまで色々と考えられたが、アルミニウムを主原料とした加工メーカーとして、非常に誇れる社章であり、又、意味深いものではないだろうか。
【理研電化工業(株)社報NO6昭和35年7・8月合併号記載記事転戴】
理化学研究所は、アルマイト技術の特性を利用したアルマイト漆器の製作を進めていたが、昭和12年5月に試験工場を静岡市曲金の静岡県農事試験場跡地7,200坪に建設した。現在もこの地で操業を続けている。